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補償金制度において補償金の支払いが必要となるデジタル製品のうち、録音用製品についてはSCMS方式(シリアル・コピー・マネージメント・システム――2世代以上にわたるデジタル複製を制限し、CDなどからのデジタル複製を1世代に限る国際的な技術的仕様)が、また、録画用製品にはCGMS方式(コピー・ジェネレーション・マネージメント・システム――コピー禁止、1世代コピー可又はコピーフリーのいずれかを権利者が選択することができる技術的仕様)が装着されています。
このようにデジタル録音・録画を制限する技術的な装置が採用されている理由は、アナログ方式による録音・録画については、複製を重ねるたびに徐々に質が劣化してきますが、デジタル方式による場合は、無制限に何世代にわたっても完全な複製物を作ることができます。そこで、複製が複製を招くという状況、いわゆる複製物の拡散による権利者の不利益を技術的に調整しようというものです。
近年におけるデジタル技術の著しい発達から、権利者保護のために一定の措置が必要な状況になってきました。このため、BSと地上デジタル放送では2004年4月5日から「1回だけ録画可能」(コピーワンス)とするコピー制御信号が加えられました。しかしながら、ユーザーには不便との問題が提起され、「コピーワンス」は「ダビング10」(ダビング・テン)に変更になり、2008年7月4日から実施されました。「ダビング10」とは、対応する録画機器のハードディスクに録画したものをDVDまたはブルーレイディスクなどの記録媒体に10回までダビングが可能なシステムで、10回目のダビングが終了するとハードディスクにある番組は消去されます。このシステムは「ダビング10対応録画機器」に限られています。(ダビング10は(社)デジタル放送推進協会(Dpa)ホームページ参照。http://www.dpa.or.jp)
今後ともSCMS及びCGMS方式の装置がそれぞれ、補償金の対象機器に装着されます。しかし、録音・録画が自由にできることに変わりありませんので、この装置が組み込まれていても補償金の支払いは必要です。
家庭内での私的録音・録画は自由にできるという問題は、このような科学技術の発達による複製手段の開発によるユーザーの便利さと、それによって被る権利者の不利益の救済という問題を解決してはじめて可能になるということであり、その意味において補償金制度はユーザーと権利者双方の立場を調整し、問題を解決するシステムであると言えましょう。
補償金制度の維持、発展を図っていくためには、今後さらにテクノロジーの開発に伴う技術的制限について、調査、研究を重ね、芸術文化と科学技術のハーモナイゼーションを図り、時代の要請に応じた対応を講じていくことが大切です。
なお、sarah(サーラ)及びSARVH(サーブ)においても、その事業の一環として、デジタル録音用機器や記録媒体の開発に伴う技術的制限についての調査研究を前述の共通事業の一つに組み込まれています。
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