|
著作権法は昭和45年に全面的に改正されたものです。その当時は、オープンリールのテープレコーダーがほとんどであり、家庭内での私的録音・録画はきわめてわずかな利用でありました。このような状況から、本来は権利者の権利(複製権、著作権法第21条)が及ぶ(=権利者の許諾が必要)「家庭内で楽しむなど限られた範囲」での私的録音・録画は、ただちに権利者の利益に重大な影響を及ぼすものではないという判断に立って、同法の第30条で私的使用のための録音・録画は、著作権の権利者の許諾を得ることなく自由かつ無償で行うことができることと定められました。
その後、科学技術の進歩による録音・録画用の機器の高性能化とその普及はめざましく、その結果、家庭内における録音・録画が容易に、かつ、頻繁に行われるようになり、膨大な量の著作物がコピーされるという状況が生じてきました。さらに、近年のデジタル方式による高機能、高性能の機器によって、家庭内においても、市販のCDやDVDソフトと同じような、高品質の録音物・録画物が作成されるという状況も生まれてきました。
このように、個々に見れば家庭内における零細で私的な録音や録画であっても、これを社会全体として見た場合は、大量の録音物や録画物が作成されることとなり、このような膨大な著作物の複製をトータル的に見れば、権利者の利益が損なわれていることとなります。
このようなことから、家庭内における私的な録音や録画による権利者の不利益を救済する必要性が生じ、平成4年12月の法改正によって、それまでの私的録音・録画は自由かつ無償という秩序を見直すこととし、私的録音・録画は、従来どおり権利者の許諾を得ることなく自由に行えることとしながらも、権利者の経済的な利益を保護するために、一定の補償措置が講じられることとなったものです。
著作権法では、私的複製の範囲を「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」と定めています。したがって私的な録音・録画だからといって大量に複製したり、他人に売ったり、インターネットで送信したりすることは、私的使用の目的の範囲を超えることとなり、著作権侵害になります。
|